他の開発製品に関しても積極的にセンターを利用したい日本ライフライン株式会社 研究開発統括部 鈴木洋平様

第7回目の「利用者の声」は、メーカーでもあり商社でもあるという2つの顔を併せ持つユニークなビジネスモデルで、国内の医療現場のニーズを的確に反映した製品を提供するために取り組んでいる日本ライフライン株式会社です。

今回は、開発中のデバイスの特徴や開発の苦労について、研究開発統括部の鈴木洋平様にお話を伺いました。

  • Q1. センターで試験を依頼していただいた開発中の医療機器の特長を教えてください 

    今回センターに試験依頼をした医療機器は、早期の肺がん治療用のカテーテルです。

    従来の肺がんの治療は、開胸あるいは胸腔鏡下で、肺の腫瘍の周辺部分から切り落として取り出すという方式でした。そのような外科的手術ができないご高齢の患者様や、身体状態の良くない患者様に対しては、放射線治療や投薬が選択肢になります。しかし、放射線治療は全国的に設備数が少なく、薬の投薬には継続的な費用が掛かります。

    アブレーションというがん細胞を焼く治療方法は、肝臓がんや肺がんで体の外側から針を刺して治療する方法として実用化されています。 今回開発している医療機器の特長は、経口的にアプローチするカテーテルでアブレーション技術を活用している点です。

    肺は針を刺すと気胸が起きてしまい、複数のがんだと針を用いたアブレーション治療が難しい場合があります。カテーテルを患部に入れて内側から焼くと、肺に穴を開けないので気胸が起こりません。肺がんが複数カ所あっても一度の手技で焼くことができます。

    外科的な傷跡もなければ、針の傷もない、体に負担の少ない処置ができる低侵襲な治療です。

  • Q2. 開発で苦労している点はありますか?

    CTの設備を使って、デバイスを対象部位に運ぶという事は達成できていますが、アブレーションの効果が、その生体によって違うので苦労しています。

    がんの焼き残しがあるとがんが成長してしまうので、治療効果がありません。

    現状の課題であり難しい部分は、アブレーションの条件設定と焼しゃく範囲をいかに結び付けるかということです。

  • Q3. 今後、製品化したらどのような形で展開していきたいですか?

    現在肺がんで外科手術ができない場合の治療方法は、放射線治療や投薬療法です。第3の治療法として、肺がん治療用のカテーテルを選択できるように展開していきたいと考えています。

    肺がんの基本的な治療は、外科的切除ですが、手術ができる患者様でも 「このサイズのがんならアブレーションで治療できそうだね」と、肺の切除をするより低侵襲な選択肢のひとつとして、アブレーション治療を選んでもらえたら嬉しいです。そして、たくさんの患者様に届けることができれば良いと思っています。

    センター:対象は早期の肺がんのみですか?

    そのように想定しています。がん治療の基本は取り残し・焼残しがないことなので、現状では小さいサイズの早期がん患者が対象になると考えています。

  • Q4. センターの利用を決定したポイントはどこですか?

    現在デバイスの開発で協力いただいている信州大学の先生方から、センターで試験を行ったらどうかと提案をいただきました。
    アブレーションの効果確認に必要なCTが撮影できる設備や、目的の試験を実施するための十分な設備がそろっていたところが決定したポイントです。

  • Q5. 今回、有望開発案件集積事業による試験費用の負担減が得られたことは、センター利用の判断材料のひとつになったのでしょうか?

    デバイスの改良ではない新しい機器の開発は、チャレンジの部分が大きいです。機器を試作し、実際臨床で使用できるかどうか、実現性の判断をしないといけません。その時点で多額の費用を掛けるのは、企業目線だとかなり不安があります。動物実験は大きくコストが掛かってくるので、助成いただけることは大変助かります。

  • Q6. 実際にセンター利用してみていかがでしたか?

    想定通りでした。
    試験計画書を作成する前に、細かくコミュニケーションを取ってもらい、試験計画書に落とし込むことができました。実際大きなトラブルもなく、イメージ通りに試験ができましたので大変ありがたく思っています。

  • Q7. 今後センターにご意見や期待していることなどありますか? ​​

    他の開発製品に関しても積極的にセンターを利用したいと考えています。さまざまな試験の経験を積んで、新しい試験でもスムーズに実施できるようになってもらえると助かります。

  • Q8. 貴社は、商社とメーカーの2つの機能を持っていますが、貴社の特長を教えていただけますか? ​​

    商社としての機能と、メーカーとしての機能を持っています。特に強みとしているのは、商社機能があるので全国のドクターに対して密なネットワークがあるということです。ドクターからの意見の吸い上げ能力が他社に対して優位であると思っています。ドクターより 「デバイスが使いづらいのでその部分が改良されたらみんなが使うのではないか」など潜在的な課題に対する意見をいただいて、現状のデバイス改良品、または全く新しいデバイスを開発するなど、ものづくりに現場の声を生かすことができると思っています。

    センター:全国のドクターとネットワークがあるのは、本当にすごいことです。製品開発のスピードが速いというイメージがありますが、やはりスピード感を大切にしていますか?

    大切にしています。最新医療機器をできるだけ早いタイミングで世の中に提供することです。待っている患者様は世の中にたくさんいるので、そういった意味では社内でもスピード感を大切にしています。それが顧客ニーズに対応することにつながっています。

    センター:本日はありがとうございました。

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