これからもセンターで試験や企業マッチングを利用したい株式会社クレハ 新事業開発部 嶋田様 関根様 山下様
第9回目の「利用者の声」は、福島県いわき市に事業所がある株式会社クレハの新事業開発を担当されている嶋田様、関根様、山下様です。
株式会社クレハは、日本大手の化学工業メーカーで、最先端技術を支える高機能材製品や樹脂製品をはじめ、家庭用ラップの「NEWクレラップ」は、私たちにとって身近な存在になっています。化学工業メーカーとして医療機器業界に参入し、今まで培ってきた独創的な開発技術から、手術後の臓器間癒着を防ぐ「癒着防止材」の開発を進めています。
センターを利用した経緯や感想、今後の展望などを伺いました。
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- Q1. 今回、センターで試験をした「癒着防止材」の特長について教えてください。
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まず「癒着」とは、術後に傷が治るときに、離れている臓器同士や周りの血管やお腹の壁等が間違ってくっついてしまう現象のことで、開腹手術等で高い頻度で起こり、腸閉塞や臓器損傷などの合併症を引き起こす可能性があります。
現在、「癒着」を軽減するために生体吸収性フィルムを手術の傷に貼り付けて、臓器同士等が術後にくっつくことをある程度防止できるようになりましたが、フィルムの分解速度が速いので癒着防止期間が短いことや、腹腔鏡手術では取り扱いが難しいという課題があります。私たちの開発品についての特長は、一つ目に医療機器で使用実績のある素材を組み合わせた複合材で、生体吸収速度を制御することで、長期間の癒着防止効果を維持することができます。 そして、センターで実施したブタを使用した安全性試験では、実際に医師に開発品を使っていただきましたが、腹腔鏡手術で操作性が良く、貼り付けやすいということが分かりました。
二つ目は一定の時間までは強い密着を防ぐことからフィルム同士くっつかないので、取り扱いやすいという特長もあります。また、初期だと臓器の場所を間違えて貼ってもはがすことができます。
センター:そのような特長が他社との差別化ポイントになるのでしょうか。
フィルム同士がくっつかないという製品はすでに販売されています。
ただこのフィルム同士が貼りつかない、もしくは臓器に張り付いた後にはがせるというのは操作性が良いとも言えますが、逆に最終的に密着してほしいのに、はがれたり、ずれたりするのではないかと考えてしまいます。
しかし、私たちの開発品は、初期ははがせるが最終的にはピタッと密着するという特長を持っていることがポイントです。
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- Q2. センターに依頼した経緯や、試験を依頼する決め手を教えてください。
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どこからお話したら良いでしょうか(笑)。センターには長くお世話になっています。
私が本格的にセンターとお付き合いが始まったのは2021年だったと思いますが、私たちの開発品にニーズがあるのか、製造の委託先があるのか知りたかったので、企業マッチングでいろいろとお世話になりました。
開発品がある程度形になってきて、今度は医師に話を聞きたいと思ったときに、学会への共同出展を紹介いただきました。その学会では、医師の方々に実際に触ってもらい非常に操作性が良いということを確認することができました。
その後、手術器具を使って実際に効果や操作性を検証する必要が出てきました。ラットを使った試験は社内でできますが、実際にヒトに近いブタを使った試験を実施したかったのでセンターに相談しました。試験を依頼するのに、同じ福島県内で距離的に近いというのも決め手になりました。試験に立ち会うためのハードルが下がったと思います。 最初はセンターについて知らないことも多かったですが、試験担当者の方と話をしていくうちに、どういう設備があって、どのようなことができるのかイメージできるようになりました。
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- Q3. センターに依頼した経緯や、試験を依頼する決め手を教えてください。
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安定して開発品を作れなかったことが一番大変でした。良いのか悪いのか分からない。時々すごく良い(笑)
そのようなことがあって、良い結果だけを見たらすごく良さそうだし、悪い結果だけを見たらあまり良くなさそうで、確証が持てませんでしたが最近良い結果を安定して出せる作り方がしっかりと掴めてきました。
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- Q4. センターで試験を実施するにあたって不安なことはありましたか?
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ブタという大型動物を扱ったことがなかったので、私たちが考えたことを実現できるのか、どのような評価をすれば知りたいことが分かるのか、最初のころは不安がありました。
そんな中、センターとの打合せの中で試験担当者の方の助言やアドバイスをもらって大丈夫だとわかりました。そういった打合せをしっかりして試験を実施したことで良い結果が得られたと思います。span>
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- Q5. 実際にセンターで試験をしていかがでしたか?
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もう設備は素晴らしいですし、難易度の高いことにもしっかり対応いただきました。さらに事務的な対応だけでなく病理や動物の手技についてもフォローしていただいたので大変助かりました。
ブタを使用した試験を継続的に実施する予定があるので、今後とも利用させていただきたいと思っています。
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- Q6. 開発している癒着防止材は、2030年上市を目指すと伺いましたが、今後どのように利用されていくことを望んでいますか?
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市場シェアの2割を獲得していきたいと思っています。海外展開も考えています。
世の中で、癒着で困っている多くの方に使ってもらいたいですし、先生方により使いやすいと言ってもらえるような製品を世の中に出していきたいと考えています。センター:今後事業を拡大するとしたら、同じような領域で関連商品として発展させていくのでしょうか。それとも全く別の道で製品化を探していくのでしょうか。今後のビジョンはありますか?
いずれの展開も視野に入れています。上市する製品を軸として、いろいろな関連製品や適用部位を増やしていきたいと考えています。
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- Q7. 貴社の業界での強み、この部分は負けない、今後延ばしていきたい部分等教えてください。
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医療機器の業界において、今まで培ってきた高分子の製造・加工が一番の強みだと思っています。そして、かなり特長的な材料をもっていること、それをしっかり成形、加工、評価できることができます。
これまで、医療機器、医療材料をやってこなかったので、癒着防止材を皮切りにいろいろな製品を出していきたいと思っています。医療機器開発を会社の軸にして広げて、世の中に貢献して行きたいと考えています。センター:クレハといえば「クレラップ」が、一般的に知名度が高いと思いますが、他にも強みがたくさんありそうですね。
実は、クレラップ以外が結構あるってことは伝えたいですね。(笑)
クレラップを含む樹脂製品事業はクレハグループの連結の売上収益の1/4くらいで、エンジニアリング・プラスチックであるポリフェニレンサルファイド(PPS)や、リチウムイオン電池のバインダーとして使われるポリフッ素ビニリデン(PVDF)、ポリグリコール酸(PGA)などの樹脂や農薬、カーボンなど多種多様な製品群がクレハを支えています。 クレラップはありがたいことに認知度が高く、皆さんにクレハを知っていただき嬉しいです。センター:クレラップはうちでも使っています(笑)
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- Q8. 今回は、有望開発案件の助成金を利用した試験でしたが、大企業である貴社にも助成金は役に立つのでしょうか。
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今回、試験依頼をするときに助成金の案内をしてもらって初めて知りました。 知った時に、正直なところこれならすぐに試験ができると思いました(笑)
センター:以前他の大企業の方から、大きい会社だからって予算が豊富にあるわけではないと言われたことがありました。大企業でもこの助成金は貢献できているのでしょうか。
限られた予算の中で取捨選択して検討を進めていることもあり、助成金を頂けるとより多くの検討を短期間に実施することができるので、今回助成していただけたのは大変ありがたかったです。ブタを使用した試験の結果をみて、次に何をすればいいのか計画が立てることができます。 結果的に上市に向けて半年は予定が早まっています。
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- Q9. 今後センターに期待していることはなんですか?
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ブタを使用した試験について、まだわからないことがあるのでサポートしてほしいです。 そして、私たちは医療機器が初めてなので規制対応や私たちに足りない部分についてアドバイスいただきたいです。 試験だけではなくマッチング等も利用したいと考えています。
センター:本日はありがとうございました。
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- お客様インタビューご協力会社
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株式会社クレハ
住 所: 〒974-8686
〒974-8686 福島県いわき市錦町落合16ホームページ: https://www.jll.co.jp/