国内で海外申請データ取得ができるGLP認証施設東レ株式会社

第3回目の「お客様の声」は、1926年レーヨン糸の生産会社としてスタートし、それ以来、素材メーカーとしてさまざまな分野において技術を発展させ、医療機器分野でも事業を拡大している東レ株式会社を紹介します。

東レ株式会社で医療機器事業・開発に携わっている佐藤さん、八木さん、針原さんの3名に、バルーンカテーテルの開発についてのお話や、センターで行った安全性試験のお話をお聞きしました。

  • Q1. 今回センターで試験を行ったバルーンカテーテルの特徴はなんですか?

    《佐藤さん》
    今回センターに依頼した製品は、心臓の大動脈弁狭窄症の治療に用いられるバルーン付きのカテーテルです。この製品は、2018年に国内で上市し、今後は海外展開も検討しているため、必要な安全性評価とユーザビリティ評価をお願いしました。

    この製品の特徴は、柔軟なバルーンで、拡張と収縮に要する時間が短いということです。その点で、医師から高評価をいただきました。

    そしてもう一つは、バルーンの膨らみ方に特徴があります。この製品は、まずは始めにバルーンの片側が膨み、次に反対側が膨らむことで、バルーンの中央部がくびれた状態になります。その見た目から「ひょうたん型」、「砂時計型」などと呼ばれており、バルーンが大動弁に確実にフィットした状態で最後まで拡張することができます。

  • Q2. 東レというと繊維というイメージがありますが、医療機器開発に行き着いた背景を教えてください。

    《針原さん》
    もともと当社は繊維会社ですが、4つのコアテクノロジー(有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロ ジー)を持っています。

    その技術発展から事業を展開していますが、本日お話する医療機器でいうと、ダイアライザーのような透析のためのろ過装置の中には、中空糸という高分子でできた繊維が中に入っています。また、医薬品の開発においては、有機合成化学など技術が使われています。

    さらに、今回の試験に使用したバルーン付きカテーテルのベースとなった製品は、 バルーンの内側にストッキングのようなメッシュの糸が入っているので、繊維という点から開発に着手した経緯があります。そして、臨床経験豊富な医師からご指導をいただいたことで今の製品につながっています。

  • Q3. 今回の製品開発で一番苦労された点はなんですか?

    《佐藤さん》
    今回、センターで試験をさせていただいた製品については、医師から「動脈から大動脈弁にバルーンを送達するため、カテーテルの径をより細くしてほしい。一方で、拡張収縮スピードは落としてほしくない。」という要望がありました。

    カテーテルの細径化と拡張収縮スピードはトレードオフの関係にありますが、内部構造を工夫することによって、カテーテルを細くしつつ、拡張収縮スピードは変わらない新しいモデルを設計することに成功しました。このトレードオフの関係性を打開する点が一番苦労したところです。

  • Q4. 今後、この製品はどのように進化していく予定ですか?医療機器開発の今後の展開を教えてください。

    《佐藤さん》
    このモデルに関する課題やさらなる市場ニーズに加え、医療機器に用いる原材料の規制などへの対応が考えられます。

    たとえば、さらなる細径化や原材料の変更をおこなう場合、安全性評価が必要になってきます。今回の製品に限らず別の製品でも、今後もセンターで試験を実施させていただきたいと考えています。

    この製品は、海外への展開を予定しており、自分が開発に携わった製品を日本から発信し、より多くの人に使っていただけることが非常に喜ばしいことだと感じています。
    今後は、今回の経験を活かして新しい製品開発でグローバルに展開していけるようなものを、開発していきたいと思っています。

  • Q5. センターのご利用を決定したポイントはどこですか?

    《八木さん》
    米国の大学にお勤めのご高名な先生からのご紹介がきっかけです。
    アメリカでその先生と動物実験の話をしていた時に、国内で良い施設を知りませんか?と聞いたら、福島にあるセンターが日本でトップレベルの施設が整っているという話が出たので、センターに直接相談しました。

    一度試験前に施設見学ツアーに参加させていただきましたが、実際に見学して設備がすごく充実しているということがよく分かりました。そこが一番のポイントですね。

  • Q6. 何度もセンターをご利用いただいていますが、実際に利用してみていかがでしたか?

    《八木さん》
    これまで、3、4回利用していますが、年々レベルアップしていると感じています。初めての利用させていただいた頃は、施設が立ち上がって間もない時期で、実験準備に少し時間が掛かっている印象を持ちました。
    しかし、何回か利用させていただくうちに手際がすごく良くなってきたと感じました。

    また、施設の方々が非常にフレンドリーで、土地柄もあるのかもしれませんが、すごく人がいいなと思いました。実験中もフランクに話しかけてくれたのが良かったです。

    《佐藤さん》
    信頼性基準のチームが実際に動物実験の現場に来て、試験内容をチェックし、試験担当者にこれでいいのか質問している様子を見て、これまで経験した試験の中で、センターの信頼性基準の体制は素晴らしいものがあるなと思いました。

  • Q7. 試験準備でのスタッフの対応はいかがでしたか? ​​

    《佐藤さん》
    試験前には、担当者の方と長文のメールや電話で何度もやり取りをしました。今回のユーザビリティ評価試験は、どういった評価をしたらいいのか明確な基準がない中、国内の医師を3名招へいし、担当のスタッフと相談しながら色々と作り上げていくことができたので非常に良かったと思います。

    製品を海外に展開するため、海外の認証を取得するということが前提で、センターに試験をお願いしました。担当スタッフが色々調べて一緒に考えてくれて、すごくきめの細かい対応をしていただけたと感じました。

  • Q8. 今後、センターに期待していることは何ですか? ​​

    《八木さん》
    海外の法規制に対応した試験ができるGLP認証を取得している施設は国内では少なく、医療機器メーカーが海外施設で試験をやるとなると遠隔または現地に行くことになりますから、とても大変です。

    今回、センターでも初めてのケースだと聞きました。今後、海外申請を見据えた対応がどんどんできるようになっていただけると、より活用しやすいと思います。

  • Q9. 有望開発案件の助成金を利用して、貴社でどのようにお役に立てましたか? ​

    《佐藤さん》
    助成事業に採択させていただいて、一番大きかったのは費用の部分、そして試験の評価結果について、国内でより多くの病院にこの製品を採用していただくために、かなり有効なデータが取れたと考えています。
    このタイミングで助成金を活用させていただいて、海外販売、国内販売の双方でメリットがあったと考えています。

    《八木さん》
    医療機器の市場は医薬品と比較すると規模が大きくありません。また、PCIのようなメージャーな領域では海外医療機器メーカーが強いことが多い現状です。
    一方で、この製品の様に市場規模はPCIほどに大きくなくても、患者さんのQOL改善につながるデバイスを開発するうえで、企業での開発予算のみだけでなく、今回のような助成金があることで迅速かつ適切な開発、さらには日本から海外への医療機器の発信が可能となり、大変有益だと考えています。

  • Q10. 最後に、今後センターの利用を考えている企業様にメッセージをお願いします。 ​

    《八木さん》
    先生方とお話する機会が結構あるのですが、その中で動物実験の話になると、「ふくしまの施設はいいですよ。」という話をしています。
    今後は医療機器も複雑化して、今まで経験したことがない試験も増えてくると思いますが、企業もセンターもお互いにブラッシュアップしながら、スキルや知識を高め合い協力して進めていけると考えています。

    《佐藤さん》
    設備は整っていますし、スタッフの方も親身になって相談にのっていただけるので、積極的に使ってください。

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